「悪いのはV6です」

その時、井ノ原くんは確かにそう言った。

 
20周年のライブツアー千秋楽。
これ以上ないくらいな見事な秋晴れ。
その日のチケットは持っていなかった。でも、代々木に行かなくちゃ。
何しに?
ほら、代々木ではリボン*1書いてないし。
最後の風景を焼き付けたいし。なんだったらNHKでイベントやってるし。
なんでもいいのよ、行きたいの。
 
やはり頭にあったのは、10周年の時の代々木第一体育館
人で埋め尽くされた屋外での記者会見。
歩道橋まで人でいっぱい。その中を歩くV6。
その映像は脳内で繰り返しリピートされる。
 
こんなあるかどうかわからない脳内願望のために遠くの友人を引っ張っていくのも憚られ、いかんせん泥をかぶったのは相方*2になった。
 
到着した時はすでに人でいっぱいだった。このあとさらにパンパンになる。改めていうが、なんの告知もされていない。たぶんみんな自分の脳内願望だけでやってきた。
翌日の新聞によるとその数2万だったそうだ。
 
おお、同志! 
 
この人数が、係りの人の指示どおりに動く。口ではぶちぶちいいながらも、だ。
写真は撮ってはいけない。録音もしてはいけない。SNSにあげてはいけない。場所を移動しないで。水分はとって自己管理して。
この時点でV6が来ます、という話は一切されていない。いわゆる暗黙の了解。
 
果たして、V6は現れた。歩きながらゆっくり手を振ってくれ、記者会見をし、またゆっくり戻っていった。
 
立ちゾーンだった私の場所は、V6が来た時こそ若干詰めぎみになりはした。なりはしたが駆け寄る人も、大声を上げる人も、騒ぐ人もいない。
会見場所は遠い。目視で確認できるけれど。
と、突然前にいた女の子が振り向いて「見えますか?」
驚いた。見えます、と答えながらみると、彼女は若干背が高かった。なんという心遣い。自分も見えるかどうかなのに後ろの人を思いやれるなんて。優しくされると優しくなる。何かしたあげたくなる。最強オペラグラスを持ってきていたことを思い出し、彼女に貸してあげる。最初は遠慮していたが、見える!と喜んでくれた。バードウォッチング用なので、明るくクッキリ見えるのだ。
 
そんな感じで見守っていた時、会見中の井ノ原くんはこう言った。
 
「皆さん、V6といいます。こんにちは。ご迷惑おかけしてごめんなさい。この人たちは悪くないんです。悪いのはV6です。うるさくしてごめんなさい。いいマンションですね。こんにちは」
 
なんとなくこんな感じのことを、道行く人、住んでる人、おそらくV6には全く関係ないであろう人に向けて。
 
 
「悪いのはV6です」
 
 
20周年のライブツアー千秋楽の記者会見だ。
頑張ったよーどうだー!と胸を張っていい場所だ。なのに。
どーだ!より、謙虚に感謝を口にする彼らは成熟した大人だった。それをみていたファンも本当に大人だった。20周年でバック転の話も忘れてあげた。
 
彼らが去ったあと、誰も動かない。指示に従って移動してくれというアナウンスがあったからだ。事故など起こしてV6からの信頼を裏切ってはいけない。私のいたところに指示の声は聞こえなかったが、上の段の人たちが動き出したのをみて少しずつ自然に人の塊は解けていった。
 
昔からこんなにしっかりしていたわけではないだろう。
デビュー当時はやんちゃだったという話しもよく聞く。V6も、ファンも。
20年の間、鍛えられ、成長し、いまこの日がある。
相方は、真ん中ほどにいたのだが自分がいると後ろが見えなくなると思ってその場を外れ、代々木公園側の道路向こうからみていたそうだ。そこにもファンはたくさんいたのだが、誰も写真を撮っていなかったのには驚いた、と言っていた。
 
ファンの質というのはその対象であるアーティストの質とイコールだと私は思っている。彼らがファンを育て、ファンが彼らを育てる。ファンがいろいろ問題を起こすのはアーティストにも問題がある。きちんと、それはよくないといえば、心あるファンはちゃんと言うことをきく。大好きな人の気持ちに添いたいのは当たり前の話だ。目の前に彼らがいなくても心の中でちゃんとブレーキはかかる。
 
いやいや、V6のファンはマナーがいいっていっても、そんなことなかった、あんなことがあった、このツアーでもひどかった、というのもみた。あなたの周りはそうだったのだろう。私はわからないからそれは否定しない。でも、私にはこの記者会見を含め、信じられないような出来事がいくつもあった。温かい、うれしいことだった。それも事実だ。ライブの後はゴミが落ちていないという他のアーティストのライブも長いことみてきたが、そんな想いを感じたことは1回もなかった。だからああなったのかもしれない、と今なら思うがそれはまた書く機会があれば。
 
 そして、音漏れ事件
代々木第1体育館は公園や森、事務所などに囲まれていて騒音問題は起きにくい。1万人くらい余裕だ。夜にそんな大人数で、とも思われるがそこは渋谷だ。名古屋のガイシホールも騒音ということだけを取り上げれば問題ないように思う。

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でも、それは代々木でだけ起こった。なぜか。

オーラスであること。デビュー地代々木であること。

そして、なによりもその日1日のファンの行動だったのではないかと思う。

なんにもないかもしれないのに集まった2万人。

指示に従い、おとなしく待った2時間ほど。

そして、公演が始まっても外でおとなしく同じ時間を過ごしていた1万人。

 

心を動かされると、時にマナーとか、常識とか、身の危険とか、関係なくなることがある。

あの日がそうだったのではないだろうか。

それが、スタッフのドア開け音漏れに始まり、岡田くんの「外いってきたよタオル投げ事件」に繋がった。岡田くん、後で怒られたかもしれないよ?わかんないけど。

 

でも、うれしかった。ただうれしかったのだ。V6もスタッフも。

 

本当は全員中に入れたかった。でもできなかった。それでも、こうしてお祝いしてくれる。みんなの気持ちがひとつになって本来なら起こりえないことが起こった。ただそれだけである。私はそう思っている。だから東京ドームでやればいいのに、というお花畑は、おととい来やがんなさい。

 

だから、マナーを守った方がバカみたいだとか、お金払ってみているのになんで外なんて、というのは本当に淋しい。もし、自分が思いも掛けないラッキーに恵まれても同じことを思うのだろうか。V6側はちゃんと理由があってやったこと。本当の理由は知るよしもないが、湧き上がる負の気持ちは自分との戦いだ。悔しい気持ちはわかるが、言の葉は自分に還ってくるよ。

 

そんな感じでほこほこしていたら、頼まれたグラスホッパーの舞台挨拶が当たってしまった!マジか〜いいことあるなぁ。生田斗真みたかったなぁ〜とちょっと思ったけど、そこは長く応援してる依頼人に素直に渡した。

 

ほら、情けは人のためならずだもんね。

 

 

 

 
 
 

*1:今回のツアーではV6に内緒で紙の紅白のリボンに各会場ファンがメッセージを書いた

*2:ダンナ。V6にハマっているおじさん